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薄い唇の左右を上げた顔に、リリコは続ける。
「喋りづらいので、サングラスを取ってもらっていいですか」
カナメは、真っ黒なレンズを、ゆっくりと顔から外した。
「綺麗ですね。両方とも、本物ですか」
カナメは、右が白く、左が赤い目を細めた。
「右は、一年前から、左は、生まれつきです」
「カナメさんに、世界は、どの様に見えますか」
答えは返ってこず、リリコは、目の前の姿を眺める。
シワが見当たらない、黒い、喪服の様な細身のスーツに。
ネクタイも、艶のある尖った靴も黒。
「右は、もう見えません。左も、もうほとんど視力がありません」
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