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紙面の照り返しが少ないように、そして何より、部屋の前方中央にどんと鎮座しているモニターがよく見えるように調光されたブースの中。
『……あなたたちは遠慮なんてしないでいいわ。責任なんて大人に押し付けて、思いっきり戦いなさい』
画面一杯に映し出されたキャラクターが――キャラクターに合わせてキャスティングされた別の事務所の先輩声優がマイクに向かって凛と微笑んだ後、素早く周囲を確認しながら、さっと後方に下がった。
先輩はそのまま音を立てないように移動して、ブース内の壁に沿うようにして置いてあるソファーの自分の席まで辿り着くと、共演者の邪魔にならないよう身体をギリギリまで端に寄せている。
万が一にでも、台詞を収録しているその時に椅子の軋みが入ってしまうとリテイクになってしまう。
その為、基本的に椅子から立ち座りするのは、場面転換のシーンやAパートからBパートの幕間以外は自重するものだ。
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