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『お前は諦めろって言ったけどさ、やっぱ、俺は納得いかねえ』
左端のマイクに入った別の先輩声優が喋り始めたのを横目に、俺は空いたばかりのマイクに入った。
一番右端のマイク。
テスト時と同じように顔は正面――ポップガード越しの収音マイクに向けて半身になって、右手に持った台本を目線とほぼ同じ高さまで上げる。
「…………」
数秒遅れて、事務所の同期である女性声優が反対側に同じく半身で入ってきた。
登場キャラクターの多い作品だと、こうして一本のマイクを二人で使うこともざらにあるのだが、その際顔が接近するので、少しだけ苦手だ。
一度役に心を傾ければ、そんなことを気にしている余裕なんて、すぐになくなるのだが。
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