出会い

1/8
225人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ

出会い

香織は仕方なく学校へ向かっていた。 …あーあ、めんどくさい。早く卒業してフリーターになりたい。 勉強なんておもしろくないし、お金になるわけでもない。無駄だなあ。 でも、高校生が昼間から堂々と働ける場所はないから、仕方がない。 卒業まであと一年、暇つぶしにでも学校に行くしかないのだ。 高校に向かうバスの中に、制服姿は香織しかいない。 そりゃそうだ。もう10時なんだから。 空いたバスの一番後ろに座る。他の席より少し高くなっていて、眺めがいい。 高校までの20分、のんびり座ってバスの旅を楽しめるのは、遅刻した者の特権だ。 高校は嫌いだけど、バスに乗るのは嫌いじゃない。 時間合わせで出発せずに待たされるのも、わくわくを味わえるから好き。 でも、早く出発してくれれば良かったのに、と後から思うことになるとは この時の香織は知らなかった。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!