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出会い
香織は仕方なく学校へ向かっていた。
…あーあ、めんどくさい。早く卒業してフリーターになりたい。
勉強なんておもしろくないし、お金になるわけでもない。無駄だなあ。
でも、高校生が昼間から堂々と働ける場所はないから、仕方がない。
卒業まであと一年、暇つぶしにでも学校に行くしかないのだ。
高校に向かうバスの中に、制服姿は香織しかいない。
そりゃそうだ。もう10時なんだから。
空いたバスの一番後ろに座る。他の席より少し高くなっていて、眺めがいい。
高校までの20分、のんびり座ってバスの旅を楽しめるのは、遅刻した者の特権だ。
高校は嫌いだけど、バスに乗るのは嫌いじゃない。
時間合わせで出発せずに待たされるのも、わくわくを味わえるから好き。
でも、早く出発してくれれば良かったのに、と後から思うことになるとは
この時の香織は知らなかった。
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