第1話

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少しの沈黙のあと、コクッと〝猫〟が小さく頷いた。 …涙は止まっていたようだが、まだ俺の手は取ろうとしない。 俺に着いてきていいものか、迷っているようだった。 こいつは今までもずっと、こういう生活をしてきたんだろうな。 その中で、俺みたいな奴に声をかけられたことがあったんだろう ただ、声をかけた奴らが、こいつにとって〝悪者〟だったことは、こいつの態度から分かる。 だから余計に、俺の事を警戒している。 「俺がお前にいま声を掛けたのは、ただの気まぐれだ。」 助けてやろう、とか そんな善人の考えじゃない。 ただ、俺の作った飯を食べてくれる そんな奴をたまたま見つけたから。 お前の為じゃない 俺のために、家に来い。
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