第1話

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「……ッ」 …しかし、俺がそいつの腕を掴もうとした瞬間、 すごい勢いで後ずさりされた。 「……」 その俊敏さは本当に猫のようで、思わず目が点になった。 「…やっ」 ふるふると首を振るそいつは、なおも弁当を大事そうに抱えていて…その目からは、うっすらと涙が溢れていた。 …何もそんなに怯えなくてもよくないか。 ちょっとムッとしたが、そいつの格好とそいつの抱えている弁当を再度見て、ハァとため息をついた。 それから俺は、ちょっとだけそいつに近づき、しゃがんで目線を合わせながら手を差し出す。 「…おいで」 猫を相手にするように、ゆっくりと呟く。
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