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「……ッ」
…しかし、俺がそいつの腕を掴もうとした瞬間、
すごい勢いで後ずさりされた。
「……」
その俊敏さは本当に猫のようで、思わず目が点になった。
「…やっ」
ふるふると首を振るそいつは、なおも弁当を大事そうに抱えていて…その目からは、うっすらと涙が溢れていた。
…何もそんなに怯えなくてもよくないか。
ちょっとムッとしたが、そいつの格好とそいつの抱えている弁当を再度見て、ハァとため息をついた。
それから俺は、ちょっとだけそいつに近づき、しゃがんで目線を合わせながら手を差し出す。
「…おいで」
猫を相手にするように、ゆっくりと呟く。
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