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「俺のこの手を取れば、その賞味期限切れの弁当じゃなくて、
温かい、旨い飯を食わせてやる」
なるべく優しい声色で、そう言った。
…が
「……ッ!」
その〝猫〟は、唇をキュッと引き結んで、ふるふると激しく首を振った。
…そして、悪者を見るような目で、俺をキッと睨んだ
…つもりでいるのだろうが、
そいつの震えと涙は引っ込むことはなかった。
…ああ、怖がらせているな、と思った。
それと同時に、
こいつに、まだ人を警戒する考えがあったことに、安堵する。
俺にとってこいつは見ず知らずの他人だが、何故だかこのときはほうっておけなかった。
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