第1話

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「俺のこの手を取れば、その賞味期限切れの弁当じゃなくて、 温かい、旨い飯を食わせてやる」 なるべく優しい声色で、そう言った。 …が 「……ッ!」 その〝猫〟は、唇をキュッと引き結んで、ふるふると激しく首を振った。 …そして、悪者を見るような目で、俺をキッと睨んだ …つもりでいるのだろうが、 そいつの震えと涙は引っ込むことはなかった。 …ああ、怖がらせているな、と思った。 それと同時に、 こいつに、まだ人を警戒する考えがあったことに、安堵する。 俺にとってこいつは見ず知らずの他人だが、何故だかこのときはほうっておけなかった。
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