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「え、何? まさか、カミって狼のカミとか言う!?」
目の前にいるのは、どこからどう見ても野性味あふれまくりな獣姿の狼だ。
人の倍以上ある体格で、その上しゃべる。
強固な外面を持つヨシュアも唖然として、どうでもいい名前なんかにツッコミを入れてしまった。
「言っておくが、俺のカミは神様のカミだからな」
どうでもいいと思うヨシュアに反し、当の狼はこだわって否定した。
「狼のカミでいいだろ。少なくとも、私はそのつもりだ」
しかし、レスターもどうでもよさげに口を挟んだ。
「おい、狼のカミって単純すぎるだろう。だいたい、さっきの犬っころって紹介はなんだ!」
「犬だろうが狼だろうが、獣に変わりはない。どっちでもいいだろう」
「大きく違う! 何より、俺は神様のカミだと言ってるんだ。俺のおかげで平和を保っているんだから、少しは敬ってみろ」
「はあ!? だったら、立場が逆だ。私達のおかげで、のんきな山神ライフを送っていられるんだろう。そこの酒だって、貢いでやる王族がいるから呑めるんだ。そっちが頭を下げて感謝すべきじゃないのか」
この会話で、小川の水以外に漂う匂いが判明した。
カミの横たわる岩のくぼみに、なみなみと注がれているのがそれだろう。
酒呑みの山犬、もとい狼がいる。
神様だと思えば酒好きも頷けるが、ふさふさの毛並み姿を目の当たりにしては、なんとも複雑な心境だ。
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