第二章

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「そこのちんちくりん、神を侮るなよ。そもそも、ウェイデルンセンの王族は山守の血を引いているんだからな」 「それだよ、それ。私は、それがおかしいと言ってるんだ。神だろうが、正体は獣なんだ。人間と添い遂げようだなんて、思い上がりも甚だしい。さっさと諦めろ」 ヨシュアを掴むレスターの手に力が入る。 「諦めるも何も、これはティアラの望みだ。巫女の願いを叶えて何が悪い?」 「はん。どうせ小さい頃に、ずっと一緒に居たいから結婚する! とでも言っていたんだろう。仮にも神が、そんな話を真に受けてどうする」 カミはちっとも揺らがなかったが、隣のティアラは小さくなっていた。 「レスター、ティアラはお前とは違う。この姿の俺を受け入れている。狭量な人間のお前にはわからないだろうがな」 「相変わらず、ティアラは特別なのね」 「ああ、そうだ。お前と違って、可愛げがあるからな。そういうお前は、すっかり誤魔化して生きるのが上手くなったようじゃないか。そんな格好をして、無知な小僧をたぶらかしてどうする。確か、三十路になったはずだろう。そんな事では行き遅れるぞ」 ヨシュアは、ブチっと音が聞こえた気がした。 見れば、レスターのこめかみにくっきりとした青筋が入っている。
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