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怒りに任せて歩くレスターに連れられたのは、街の賑わいから外れた小さな食堂だ。
内装は素朴で、出てきた料理も素朴だったが、素材の味が生きるよう丁寧に調理されていた。
レスターに延々と愚痴をこぼされながら説教されていたヨシュアとティアラは、胃に優しい味付けのおかげで心から感謝して黙々と食べていられた。
「んー、お腹いっぱい。満足した」
デザートまで頼んでお腹が膨れたからか、言いたい放題で発散したからかは不明だが、レスターは食べ終わる頃にはすっきりしていた。
「さて、私はこのまま仕事に行くか。あんた達はデートして仲を深めてなさい。夕方には迎えを寄こしてあげるから」
「え、ちょっと」
引き止める間もなく、あっという間にいなくなってしまった。
「いつも、あんな感じなのか」
こんな感想しか思いつかないヨシュアに、ティアラは黙って肯定した。
「強烈だな」
「ごめんなさい」
ティアラはうなだれた。
ヨシュアが謝られるのは三度目だ。
「何が」
「カミの事、今まで黙っていたから」
「ああ、それなら必要ない。むしろ、ずっと黙っててほしかったくらいだから」
関わるべきではないと訴える本能に間違いはなかった。
ただ、それを回避する能力がなかっただけの話だ。
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