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「ティアラはカミに育てられたようなものだ」
レスターの顔には、後悔と淋しさが読み取れる。
「ヨシュアも少しは話を聞いたんだろう」
「あいつの両親が亡くなった時、カミが慰めてくれたって聞きました」
「そうだね、悪い事ばかりだとは思っていない。兄夫婦が亡くなって、ファウストは全力で頑張っていたし、私はそんな甥っ子のサポートに付きっきりだ。一人になったティアラの側にいてくれたのは感謝してしている」
いくら妹バカで小さな王国だと言っても、一国の王である以上、責任は重大だ。
ましてや、幼い時に突然の就任だ。
ファウストもレスターもさぞかし大変だった事だろう。
「まあ、だからって、背中に乗せて山を駆け回るのはどうか思うけどね。おかげで、未だにこちらの世界に興味がない。のんきなものだよ」
「……ティアラは、あなたを心配してました。いつも忙しそうだって。けど、嫌われてるから何も言えないそうです」
山の険しい道のりで、ティアラは自分について語った。
部屋に押しかけてくる時は要望を全面に主張してくるか、ヨシュアの話を聞きたがってばかりいたのにだ。
先に立って、顔を合わせなく済むせいか、ぽつりぽつりと告白するようにしゃべっていた。
「そう、あの子がそんな事を」
これ以上首を突っ込むのは性分ではなかったが、黙っているのも悪い気がした。
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