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「あなたの居場所を取ったと言ってました。どういう意味なんですか」
「別に、取られたわけではないよ。私の方から拒否しただけだ」
昔を思い出すように目を細めたレスターは、覚悟を決めた様子でヨシュアに向き合った。
「巫女の総取締りは一人だ。神は一人の巫女にしか真の姿を見せない」
「でも……」
「そう、ティアラは特別だ。あの子は最初から特別だった」
レスターは感慨深げに視線を伏せた。
「ティアラの先代巫女は私の従姉で、次は私だと言われていた。すでに、カミは私の夢に現れていたからね。夢の話は聞いているんだろう」
「はい、夢の中だと人の姿をしているって」
「そう、そうなんだよ」
何を思い出したのか、レスターの顔面全体が思いっきり歪んだ。
「言いたかないけど、夢の中じゃ苛つくくらいに綺麗な面してんのよ! 正体は毛むくじゃらの毛玉のくせに!」
ダンと足を踏み鳴らす迫力に、ヨシュアは反射で体を引いた。
「おかげで、幼い私は簡単に騙されて夢中になった。そんな関係が続いた十一年後、兄夫婦が亡くなった事故で先代巫女も亡くなった。私には茫然としている暇もなかった。十三歳で王になるファウストの近親は私しかいない。ろくな引き継ぎもないまま、国事に追われていた」
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