第三章

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「その様子じゃ、今日も呼び出し?」 察しのいいシモンは、ヨシュアの顔色だけで悟ってくれる。 ヨシュアはため息しか出てこなかった。 「レスター様はいないから、山守の方だね」 「もー、勘弁してほしい」 大狼の神様と対面させられてから二ヶ月。 山間のウェイデルンセンでも草花がそこかしこで芽吹き、暖かい陽気が続いている。 そんな日和に関係なく、相変わらずヨシュアは振り回されていた。 あまり自国にいないと言っていたレスターがこまめに戻って来てはヨシュアを呼び出し、何かとティアラとくっつくよう画策してくる。 レスターが仕事で離れてほっとしていると、狙い澄ましたタイミングで、今度はカミから呼び出されるのだ。 レスターはともかく、カミは人前に姿を見せないので無視を決め込んでいたら、その日の夜に部屋が異様な気配に包まれて懲りてしまった。 ティアラが追い払ってくれなかったら、どうにかなっていたかもしれない。 おかげで、城にいながら獣の気配にも敏感になるという、いらない経験値を得た。       * * * 「はあ」 ひとしきり、カミにおちょくられてきた帰り道。 逃げていく幸せなど持ち合わせていないヨシュアが盛大にため息をついていると、廊下の向こうにファウストを見つけた。
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