第三章

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      * * * 「あー、気持ちいー」 風になびかれて、どこにも緊張の見られないヨシュアが気分良く立っているのは客船の甲板だった。 もちろん、行きに使った急流ではなく、主流での安定した船旅だ。 船内で寝泊まりするので、急流と半日も変わらない日程でウェイデルンセンに到着する。 「これで、アベルもいたら最高なのにな」 同じ気持ちのエルマは苦笑した。 オアシスのとばっちり事件により、一行は後始末の為にばらばらに行動する事になったのだ。 レスターはオアシスに残り、運営の見直し作業に入るというので現地で別れた。 悪徳酒問屋はスメラギ商会の頭であるロルフに裁いてもらう為にシンドリーに連行しなければならず、同時にウェイデルンセンにも報告する必要があった。 それで、アベルがシンドリー行きの護送の方を引き受けてくれた。 リラは護衛が任務なので、当然、ウェイデルンセン組として行動している。 近くにいないのは、対象となるヨシュアが一向に軟化しないからだ。 ボミートで下船すると、そこから馬で城に戻る。 薄暗くなった頃に見慣れた真白い城が見えてくると、ヨシュアは帰ってきたのだと安堵する気持ちが湧いてきた。 あれだけ他に居場所がない、仕方がないからだと自分に他人にも言い聞かせていたはずなのに。
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