第1章

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俺は最初は逃げも隠れも する気は無かった。 しかし、警察に電話を入れた時に 俺の中で今まで築き上げた キャリアと自分の生徒達に 申し訳なくなった。 俺はMIT工科大学で 車椅子の数学の講師として 努力に努力を重ね今の 地位を築いた。 他の大学に客員で呼ばれた俺は 美しい彼女に惚れて夢中になった。 そんな自分も バカだったんだ!! 電話に出た警官に 咄嗟に嘘をついた。 「真夜中に強盗が入りました。 婚約者は重体です。ああ、 こうしている間にも彼女の命が……」 対応に出た警官は 「落ち着いて下さい。 今、そちらに向かいます。 救急車も要請しますから 住所とお名前をお願いします」 俺は本当にパニックを 起こしかけていた。 やはり、彼女を愛してるが、 彼女は俺を裏切った。 泣きながら住所を伝えた。 「お辛いかと思いますが 気持ちを強く持って犯人は 必ず捕まえましょう」 だとよ。俺は電話を切って 彼女の遺体を見ながら ”悪いのは俺を裏切ったお前だ” と思いながら念入りに計画した 事を実行した後なのに 未練たらしく ”彼女さえ…… 俺だけを見ててくれたら こんな事には、ならなかった” と、全て自分の中では 彼女のせいにしていた。
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