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悟は僕に、何も相談してくれなかった。
行きたい、とも、悩んでいる、とも。
何も言ってくれない。
最近、いつもそうだ。
僕が忙しいからと気を遣ってくれるのか、悩みや愚痴を全然言わなくなってしまった気がした。
…僕は、悟に甘えているのか。
…甘え過ぎて、重荷になっているのか。
昼ご飯どころか、朝ごはんすら自分で作らない。
朝は自分じゃ起きられない。
我儘ばかり言うくせに、悟がいないと何もできなくて、1人ぼっちになると寂しくて辛くて泣いてしまう僕は。
…悟にとって、厄介な存在になってしまっているのかもしれない。
…僕がいなければ、彼は何も気にせずアメリカに行ける…
最近、ずっと頭をぐるぐる回るこのやるせない思い。
そんなことを考えながら、悟が作ってくれた朝ごはんを食べ、食器を洗う。
ガラスのコップを持った時…
「あっ…!」
ガシャンッ!
机に身体を変にぶつけたせいで、手に持っていたガラスコップを落としてしまった。
…これ、悟とお揃いで買ったやつなのに…
また買いに行かないと…
ふらふらとしゃがみ込み、その破片を素手でかき集めようとした。
案の定、指からは真っ赤な血が流れる。
…あれ。
可笑しいな。
手からだけじゃない、目からも液体が溢れて止まらない。
『もう、一緒にいちゃいけない』
割れたコップがそう僕に言ってるようで、指から滴り落ちる血がまるでそのコップが流した涙みたいに、破片に伝わって床に広がった。
苦しい。苦しい。辛い。辛い。
悟の邪魔をしていると思うと、胸がキリキリしてきた。
僕は、真っ赤に染まっていく手や床をそのままに、
声をあげて泣いた。
***************
「…ねぇ、悟。アメリカ…行かないの?」
「…え?」
その日の夜、僕の指いっぱいに貼った絆創膏を見て心配してくれた悟に、僕はその話を切り出した。
「行けばいいよ。絶対、悟のためになる。」
「でも…真琴、お前が…」
ほら、やっぱり。
原因は僕じゃないか。
「…悟…僕ら、別れた方がいいと思う…」
「な、なんで?!俺、真琴のこと愛しているのに!」
ガタリと席を立ち、机に拳をぶつけて悟は叫んだ。
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