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「僕もだよ!」
でも、僕はそれに負けないくらい大きな声をあげていた。
「…僕も…悟を愛してる…だから…重荷になんて、なりたくない…気を遣わせたくない…」
「重荷になんて、なってねぇよ…気を遣ってなんか…」
「でも、相談してくれなかったじゃないか!…行きたい、とも、悩んでる、とも言わずに…親友だったときは、何でも…相談してくれたじゃないか…」
我慢できずに、僕はぽろぽろと涙を流した。
「相談にものれない、悟の夢の邪魔をするくらいなら、僕は悟と別れる…親友に戻れば…相談に…」
「ッ、馬鹿じゃないのか?!」
立ち上がった悟が僕を椅子から立たせ、そのまま力一杯抱きしめてきた。
SEXの時みたいな熱い体温が、冷えた僕を包み込む。
「…そんなこと思ってくれているのに…なんで別れるなんて選択肢出したんだよ…言わなかったのは悪かった…でも、真琴にまで背負わせたくなかったんだよ…お前のこと、大切だし…」
「…ほら、そうやって遠慮するじゃん。これじゃ…恋人なのに…悟と対等でいられないよ…」
「…そうやって、お互いに気持ちぶつけ合うなら、対等だろ?」
子供みたいに泣きじゃくる僕を、悟は優しく撫でた。
悟の熱で、僕の身体も心も溶けていく。
「…コップ、新しいお揃いのやつ、買おうな。」
***************
空港。
僕はアメリカに向かう悟を見送りに行った。
「…真琴。何度も言うけど、お前と別れたわけじゃないから。」
出国審査前エリアを目の前に、悟は真剣な表情で僕にそう言った。
彼の荷物には、新しくお揃いで買ったコップの片割れが入っている。
「お前を守れるくらい大きくなって帰ってくる。迎えに行ってやるから、覚悟しとけよ。」
「…うん。向こうついたら連絡して。…いっぱい相談にのってあげるよ。」
「じゃ…いってきます。」
「…いってらっしゃい。」
距離を置けば、ただの友達になってしまうかもしれない。
…でも、いっぱいお互いのことを話して、それを聞いてあげれば、遠くたって悟を近くに感じることができるから。
そう、信じてるから。
…僕だって、悟が驚くくらい、しっかりした人間になってみせるよ。
振り向かずに前に進む愛する人の背中に、
僕は小さく呟いた。
Fin.
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