3人が本棚に入れています
本棚に追加
セミロングくらいの長さの黒髪を思う存分撫で回してから、ふと思う。
奈央は顔はかなり整っていて、お目目もパッチリと開いて、八重歯がチャームポイントだ。エクセレンッ。
なのに何故こんな可愛い奈央には彼氏が出来ないんだろう。
思い切って聞いてみるか。
「なぁ、奈央。なんで彼氏が居ないんだ?」
「ふぇっ…? いきなり変な事聞くね、おにいちゃん」
急に聞かれたからか、少し腑抜けた声を出しながら奈央は続ける。
「んー、告白自体はそれなりにされるけど、おにいちゃん以上に魅力的な人が居ないからかなっ!」
考えるように人差し指を顎に当てて、星が出るようなウィンクを交えながらそんな事を言ってくる。実にあざとい。
「そうかそうか、奈央はあざと可愛いな。よしよし。でも告白してくる奴も居るんだな…そいつ吊るしてやろうか」
「ちょっ、怖い、おにいちゃん怖い!」
…はっ!俺は今何を考えていたんだ。落ち着け俺。
「そんなことよりおにいちゃん!そろそろ行かないと!」
奈央も俺のシスコンスイッチの気配を感じ取ったのか、慌てて時計に指を差す。
「そうよ、紅葉。奈央にまとわりつく虫はお母さんに任せて、そろそろ行かないと遅刻しちゃうわよ?」
食器の片付けをしてくれていた母さんがリュックを渡してくれる。
「ありがとう母さん!じゃあそろそろ行ってきます!」
ホントに遅刻しそうだったので急いで母さんと奈央に手を振りながら家を飛び出す。
「もうっ!お母さんまでぇええ!」
そんな奈央の叫びを聞きながら切に思う。こんな平和な日常が何時までも続きますようにと。
最初のコメントを投稿しよう!