♯1、久々原 朱音

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♯1、久々原 朱音

  「10ねんたったら、あけるんだ」  ようちえんの、うらがわ。  りゅうちゃんと、たからものをうめた。 「じゅうねんって、どれくらい?」 「おとなくらい」  スコップでつちをのせた。  やまになってると、せんせいにみつかるからって、ふたりでふんだ。いっぱいふんだ。 「りゅうちゃん、おとなになるの?」 「あかねちゃんも、おとなになってるよ」 「やだ」  やだ。なんか、やだ。 「だって、りゅうちゃんは、けいさつになるんでしょ?」 「それもなるよ。あかねちゃんは?」  スモックのはしっこを、ぎゅうっとして、えんていへいっちゃいそうな、りゅうちゃんをひっぱった。 「りゅうちゃんの、およめさんになるの!」  悲しいとか、ショックとか、そういうのが全部出てきて。何にも言えずに泣いてしまった。  そうしたら先生に見つかって、りゅうちゃんが怒られた。それが悲しくって、結局おむかえの時間までぐずぐずしていた。  10年前の思い出。  それから、それぞれ違う小学校へ入ったから、りゅうちゃんには会ってない。  本当はどんな名前だったのかも、思い出せない。  幼稚園のときは字なんて読めなかったし、りゅうちゃんはりゅうちゃんだった  かけっこが早くて、うさぎが好きで、いじめっこを泣かせて、泣いてる子には優しい りゅうちゃんだった。  わたし、久々原朱音(くぐはら あかね)。  高校に入って、もうすぐ16歳。    
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