第1章

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口の中が熱かったけれど、私はすぐに答えた。宮島の顔がパァと明るく綻ぶ、見ているこっちまで恥ずかしくなってくるような笑顔だ。たぶん、彼女がこんなふうに笑うなんて、どれだけの人が知っているんだろう。きっと少ないだろうなと思うと少し誇らしかった。 「ほら、口にソースついてる」 それをごまかすように、ポケットティッシュを取り出す。ソースのついた彼女の口元をふく。柔らかいほっぺにくすぐったそうにする宮島がちょっと可愛い。猫のようだった。 空になったパックを屋台の近くのゴミ箱に捨てて、帰り道を歩く、夕暮れ時だ。落日とも呼ぶ。 「ねぇ、宮島はさ、誰かと付き合いたいとか思ったりするの?」  「どつきあい?」 「いや、喧嘩じゃなくて、交際みたいな、恋人がほしいなって思ったりしないの?」 帰り道の何気ない会話、宮島だって、年頃の女の子だ。恋をするかもしれない。 「私にはよくわからない。男の人、苦手だから……」 好奇心で聞いてしまったことを後悔した。いくら親しくなったからと言っても聞いていいことと、悪いことぐらいあるだろう。 「でも、貴女と一緒にいられるから今はいい」 ギュウと握られた、宮島の手とまっすぐな言葉が私に突き刺さる。エヘヘヘと笑う、宮島には悪いが、それは反則でしょと言いたくなった。握られた手がほんのりと温かい。 「ばっ、バカなこと言ってないで早く帰るわよ」 握られた手を振り払うこともできず、私は夕日のように真っ赤に染まった顔を隠すように帰り道を急いだ。
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