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泣き疲れたせいで、
ボーっとしてたあたしだったんだけど、
事務所に帰る途中だったのを思い出して、
「……え? でも、まだ、仕事…」
眼をパチクリさせながら、
カタコトのように途切れ途切れで伝えると、
運転席へ戻ろうとドアを開けて出て行こうとする憲ちゃんが振り返ったと思ったら、
何故か楽しそうに、
僅かに口角を片方だけ上げて、
まるで悪戯っ子のような笑みを浮かばせた。
そして、
「お前、俺を誰だと思ってんだよ?
売れっ子モデルのマネージャー舐めんなよ……。
こういう時のために、無理な仕事頼まれても嫌な顔せずに受けてやってたんだ。
少しくらいの無理は聞いてもらえるようにしてあんだよ。
まぁ、うちの社長の力のお陰だけどな…」
やっぱりいつものようにスッゴく偉そうに、
でもいつもよりあたしを見つめる瞳がスッゴく優しくて。
それは、
あたしの気のせいかも知れないけれど……。
でも、
本当にこの日から仕事を数日休むことができて、
そのお陰で、姉さんともゆっくりお別れをすることもできたのだった。
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