*リカの憂鬱*

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事が終わちゃえば、 さっさとシャワーを浴びてすっかり身支度を整えると、 後ろ髪を引かれることもなく、ドアを開けて自分の部屋へと帰ってしまう。 「明日仕事だし、帰る」 「そ。おやすみなさい、ありがと」 「あぁ」 まるで、 何もなかったっていうように……。 ホントに素っ気ないし、終始淡泊だし、 どうしてこんなに好きになっちゃったんだろ? 高校の頃、 モデルの仕事を始めたあたしは、 姉さんの旦那さんである颯介さんの甥っ子の彼に、よく勉強を教えて貰ってた。 歳も二つしか違わなかったし、 兄のようなものだったはずなのに、 いつのまにか、気づいた時には好きになってしまってた……。 だから、 バカなあたしは、 女の子たちに騒がれて困ってた彼に、 『彼女のフリしてあげる。あたしも助かるし、一石二鳥じゃない』 そんな言葉を持ちかけたのだった。 フリなんかじゃなくて、 すぐに本当の彼女になれるって信じて疑うこともなく……。 だって、 海翔に釣り合う女なんてあたしぐらいだったし。 そうして、 一緒に居るうちに、 寂しさを紛らすように、身体を重ねる関係になってしまった。 その後だった、 姉さんが病気に蝕まれてるって解ったのは。 彼が姉さんのことを好きだと気付いてしまったのもその頃だった。 あたしって、ホントにバカな女……。 彼にとってあたしはただの身代わりでしかなかったんだから……。 でも、それでも良いなんて思ったんだから、救えないバカだ。
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