*リカの憂鬱*

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なんにもなかったように、 「入るぞ?」 って声をかけてから、 憲ちゃんはあたしの近くまで歩み寄ってくると…… 「ほら、これでも飲んでゆっくり休んでろ…」 いつものようにそう言って、 あったかいハーブティーが入ってるであろうカップを机の上にソッと置いてくれた。 さっきのことを素直に謝ったりできないあたしは、 「……ありがと…」 それだけ言って、 顔を見られないように、 憲ちゃんが後ろのソファーに腰を降ろすのを待ってから、 顔を起こし、カップをゆっくりと両手で包み込むようにして持ち上げて、 ソッと口元へと運んだ。 湯気と一緒に立ち昇るハーブの香りのお陰で、 微かに心が軽くなった気がする。 憲ちゃんは、 あたしがモデルになった頃から、 ずっとマネージャーをやってくれてるから、 今年で、かれこれ10年の付き合いになる。 だから、 あたしの扱いにも慣れているし、 歳だって7つ離れているからスッゴク偉そうだし、 きっと、 いつまで経っても高校生の生意気なガキのままだ、 とでも思われてるんじゃないだろうか……。 実際そうなんだから仕方ないけど……。
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