プロローグ

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 箱庭(グリモアール)は、先代の王が作った。散りばめられた薔薇はラバース姉弟に管理されて半永久的に咲き乱れる。 「グリモアールが好きなのは分かるけれど知られたら叱られる」 「王族しか入ってはいけないなんて狡いと思うの」  クラウンと箱庭を出たエルルは顔をしかめた。ずっと気にしていたことを今更のように柔らかく忠告されても聞く気になれないというのが本音であった。エルルは箱庭が好きなのだ。 「俺はともかく、メイドさんが入り込んでいるなんて知れたらラバースに何をされるかわからないだろ」 「心配しないで、私には味方が着いているの。だから大丈夫よ」 「味方って、ムーン様のこと? 彼女は不安定過ぎるよ。直ぐに動揺する。どのみちグリモアールには近寄らないのが一番だ」  クラウンの言葉を素通りしてエルルは城の裏門から脱け出した。  裏門を突っ切った先に生えている雜林を進むとアカシヤ町に出る。  
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