プロローグ

6/9
前へ
/284ページ
次へ
 二人が炭となった樹を見ると、飛び散った灰からライオンの尻尾と耳を持った少女が生まれる。鳶色の瞳と赤髪の毛にカクテルドレスと長靴、腕には赤い布が形成された。きょとんとする二人を前に少女は長い赤髪を手で跳ね上げる。 「ワール様の命により、エルル・クランベリーを連れに来た」  名前も名乗らずに言い切った少女からエルルは逃げるようにクラウンの後ろに下がる。 「レンジ。一体どういうこと?」  クラウンが聞いた。 「クラウン、その娘を連れてワール様のところへ。明日の夜までに来るように。さもなくば、私、レンジがエンペラーと共に町を破壊することでしょう」  レンジが百獣の王の勲章であろう尻尾を振った。  エルルは、クラウンがレンジを知っていることに驚いていた。しかし、雷と共に現れたレンジの命令は絶対だ。 「わかりました」  エルルはクラウンを離れた。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加