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「物分かりが良いね。夜に迎えに来る」
レンジは言葉を残して去っていった。
「クラウン、私が《グリモアール》に入っていたせいでこんなことになったのかしら」
「そんなことはないよ。ワールにはきっと考えがあるんだ。君主に暇を頂けるように話をしよう」
「嫌よ、怖い」
エルルはクラウンの腕にしがみついた。周囲の木々がざわついた。風も強くなっている。エルルの胸騒ぎも治まらない。
「大丈夫。俺も一緒に行くから」
クラウンの手が重なるエルルの手の甲には傷がある。
十歳の時にドラゴンに噛まれた傷痕だ。下手をすれば手首ごと食いちぎられてもおかしくはない傷だった。それを治してみせたのもワールだ。それだけにワールの命令には背くことができない。エルルがどんなに拒んでも明日の夜には出頭しなければならないのだ。
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