第9話

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ーーっあ と思ったその時には、飯山さんは突き飛ばされた衝撃で床に転がり、顔を歪めていた。 「飯山さんっ」 どこか打ったのでは。 そう思い、慌てて飯山さんの側に寄る が、しかし。 屈んだ私めがけて勢いよく振られた革製のバッグが顔に当たり、その勢いから、すぐ後ろにあったエレベーター横の壁に身体を打ちつけた。 「雛森さんっ!」 飯山さんの声。 「……っ」 返事をする余裕などなく、冷たいコンクリートの壁に背中をつけ、床に座り込んで、バッグでぶたれた左頬に手をやる。
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