第9話

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「雛森さんっ!」 あぁ。そういえば、前にもこんなことがあった。 悲鳴にも似た飯山さんの声をどこか遠くで聞き、あの夏の日の出来事を思い出す。 雷鳴。 セーラー服。 風に揺れる長い髪。 雨の匂い。 『ふざけんな』 あの時は、そう言われた。 昔、私に馬乗りになり、手を上げた高校生の彼女。 今、私の胸ぐらを掴み、バッグを振り下ろそうとする女性。 時は違えど、彼女達が私に向ける感情は同じものだった。
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