第9話

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「――――…うわ」 頭上から聞こえた第三者の声。 待っても感じられない衝撃に、思わず瞑った瞼を開けた。 私の胸ぐらを掴む手は未だここにある。 見上げると、鬼のような形相は驚いた表情に変わり、その視線は、正面にいる私ではなく、彼女の隣に立つ人物に向けられていた。 振り下ろしてすぐに捕まえられた革製のバッグ。 それが邪魔をして捕まえた人物の顔が見えない。 明るいグレーのスーツ。 緊張感のない声色。 中肉中背の男性。 そのスーツ、声、背格好には心当たりがあった。
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