第9話

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「飯山さん、大丈夫?立てる?悪いけど警備員呼んできて!」 突然現れた女性にばかり気を取られ、いつの間にかエレベーターが開いていたことに気がつかなかった。 佐藤くんはそこから降りてきて修羅場に遭遇したらしい。 床に座り込んだままの飯山さんに声をかけると、私の胸ぐらを掴んでいた手を外し、自分の手で拘束する。 フッと緩んだ胸元とともに、身体の緊張がほんの少し解けた。 呆然とする飯山さんは上手く状況が飲み込めていない様子だったが、佐藤くんの言葉に何度も頷き、壁に手をつきながら立ち上がって、ヨロヨロしながらも警備員室へと走り出した。 「雛森さんも、大丈夫?」 壁からゆっくりと背中を離し、かけられた言葉に小さく頷く。
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