第9話

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「私は謝ることなんてしませんよ。悪いのはその人なんですから!」 突然向けられた声にハッとし、言いかけた言葉を思わず止める。 私と神崎くんの会話に気がついた奥様は、佐藤くんからバッグを取り返し、私を指さした。 自分を保護する言い訳に聞こえるけれど、当事者の私にしてみれば、彼女の言っていることは全て正しい。 加害者の私。 被害者の奥様。 怒鳴られて当然。 殴られて当然。 それだけのことをしたんだから、これは与えられるべき罰なんだ。 私の中ではそう理解していた。 けれど そうではない人が、ここにいた。 「奥様。おっしゃっている意味が分かりません」
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