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「だから……なんだって言うんですか。一緒にいるところを誰かに見られないように時間差で入ったんでしょう?後ろめたいことをする人間が考える、ありきたりな手段ですよね?」
乾課長の動作を見届けた後、視線を変えて私を睨みつける奥様は、肩にかけたバッグを持ち直し、馬鹿にするような言葉を吐く。
「えぇ。そうですね」
それに答えたのは乾課長ではなく、私の荷物と封筒を受け取った神崎くん。
すぐに
「でも、」
と言い直すと、私の右手を取り、優しく包み込んだ。
「ホテルから出てくる彼女の写真がないのはどうしてでしょう?」
今度は逆に、神崎くんが奥様に問いかける。
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