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「……は?」
やっと絞り出したような奥様の声は、か細く、震えていた。
私に敵意を剥き出した時の激情はどこかに消え、血の気が引いた顔は表情を無くす。
「部長と彼女が密会している。という誤解よりも、僕と彼女が密会している。という事実をあなたに報告すべきだったのに」
繋いでいた手に視線を落とした神崎くん。されるがまま、握り返さないでいる私の手に指を絡めた。
「残念です」
寂しそうな彼の視線に、奥様は気がついていないだろう。
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