第9話

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――――… 「あー。なんか、しまらないですねぇ」 梅の花も散り、降り注ぐ陽の光が温かさを増し始めた頃。 会社近くの公園でお昼ご飯を食べた帰り道。 手に下げた大きなランチバッグを前後に振りながらのんびり歩く飯山さんが、ボソッと呟いた。 「そうですか?」 3つ残したプチトマトを小さなランチバッグに入れた私は、車道を走る車をぼんやりと眺めながら答える。 「そうですよー。部長が出張でいないってだけで、中の雰囲気が違いますもん。ホワーンってしてるっていうか、なんかこう……シャキッとしてないっていうか」 「……」 ホワーンとしている彼女からそんなことを聞くのは不思議な気がしたが、言いたいことはなんとなく伝わってきた。
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