第9話

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自動ドアを抜けて会社の中に入ると、営業に出る男性社員数人とすれ違う。 「いってらっしゃい」と声をかける飯山さんと言葉をかわす男性社員。立ち止まった2人の横を通り過ぎ、エレベーターのボタンを押した。 明日部長が帰ってくるまでにしておくことは…… 残っている仕事を頭の中に思い浮かべ、それに優先順位をつけながら、飯山さんが隣に戻ってくるのを待つ。 「雛森さん。今週の金曜日って空いてますか?合コンとかってどうですか?」 小走りし、エレベーターの扉の前に立つ私の横に並んだ飯山さんは、突然そんな質問をして私の目を丸くさせる。 「……だいぶ急ですね。っていうか、私を誘うのは間違いかと思いますけど」 「え?どうしてです?合コン嫌いですか?」 「じゃなくて、雰囲気悪くなりますよ」 「えー?そうですかー?雛森さん誘うね。って言ったら喜んでましたけど」 「……」 それはあなたの勘違いでしょう。 と、既に自動ドアを抜けた男性社員を視線だけで追い、ツッコミを入れる前に、乾課長と何があったのか聞くべきか本気で悩んだ。
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