序ノ一 弟の件

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 教壇の前に立ち、その影から頭だけを覗かせて仁王立ちしているそいつは、不敵な笑みを浮かべてそんなことをのたまった。 「なっ! ちょっと千影! リークっていったい誰に? っていうか、どうしてあんたが――」  憤る真弓を見取は片手でちょんちょんと制す。 「まあまあ、真弓ちゃん。落ち着くっす。ふふん、実は自分は前から写真部さんの活動が怪しいと思ってたんすよ。そして今日、決定的な証拠を手に入れちゃったんすよねぇ。何でもオオカミが出たとか」  こいつ……まさか、あのとき屋上にいたのか!? 「ボイスレコーダーで、今さっきの会話もいただいちゃったっすよぉ。準備いいっす? 自分、これでもプロ目指してますんで!」  くそ。やられた。 「まさか、このことを校内新聞に載せる気?」 「いやいや、そんなことはしないっすよ。自分も皆さんとは古い付き合いっすからね。ただ、このままじゃいけないと、自分は思うんす。だから、ここで特別ゲストに登場してもらうっす」  特別ゲスト? 「あ、ちなみに、自分がチクッたのは、先生にだけっすから」 「先生!?」  見取の言葉に入口に目を向けると、驚く僕たちを見据えるようにしながら、涙を目にいっぱい湛えた写真部顧問、美咲先生が教室に入ってくるところだった。
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