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夢の話 第一夜
ある晩、私はこんな夢を見ました。
私は寝室の十二畳間にいて、時間は分かりませんが、どうやら夜のようです。遠くの田圃に蛙の鳴く声が、お屋敷に染み渡るように伝わってきます。
「どうして直道さんは、私のお父さまではないのですか?」
もうお休みの時間は過ぎていましたが、私と透子さんは並んだお布団の上で膝を突き合わせ、お喋りを続けていました。直志さんは寝息をたてて、部屋の隅で丸まっています。
「父さまは久々宮家の父さまだからだよ。あんたは久々宮じゃないでしょ」
「じゃあ、私のお父さまは誰ですか? 浩助さん?」
「浩助はあんたには関係ないよ。私にも、直志にも関係ない」
浩助さんとは真弓さんのお父さまのことです。私が唯一思い当たったのは彼だけでした。
「私は……直道さんの子供ではないのですか……?」
「違う。浩助の子供でもない」
「それなら、どうして私と透子さんたちは兄妹なのですか?」
そこで透子さんはくつくつと、いかにも意地悪そうに笑いをこらえながら言いました。
「あんたは兄妹なんかじゃないよ。あんたなんかと同じにされちゃ、私たちの血が汚れるってものだわ」
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