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ズンと地に伏せるキマイラの背中から降り立つと、小太りのおっちゃんは少年時代に憧れた英雄を目の当たりにでもしているかのように瞳を輝かせていた。
「スゴいよお兄さん!!まさか一人でキマイラを倒してしまうなんて!」
そんな正面から堂々と憧憬の念を抱かれるとむず痒いな。俺は背中越しに片手を振って放った鞘を取りに行った。クールを装ってるが、いま俺の顔は口角がヒクつくくらい完全にニヤけてる。
「…はっ!もしやお兄さんも勇者一行の仲間…」
「ハハ!そいつは見当違いだぜ」
ロングソードを肩に担ぎ、空いた手で短い黒髪を整える。
「俺は元勇者候補の一人ってだけさ。そう、今はただの…」
最後さえ決まればこれまでのカッコ悪さが帳消しになる。だからロングソードがくるまでの間に泣き言を漏らしながら逃げ回ってた事など記憶にございません。
「ギルドマスターさ!」
それがこの俺『リッグ・ウェインス』の信条である。
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