第1章

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「はぁー、こりゃまた派手にやられたもんだ」 あっけらかんとした口調で街の防壁にポッカリと開いた穴を見ながら、俺は両肩一杯に乗っけたレンガを職人の前に積み上げていく。 「あぁ、この辺りの亜人領を支配してた『獣使い』って魔王軍の幹部が勇者一行に敗れてから城を抜け出したやつが暴れ回ってよ。今朝方も勢いよく壁に突っ込んだもんでこの有り様よ」 やれやれといった感じに溜め息を吐きながら、左官工の親父さんは俺が運んできたレンガに手を付ける。 「亜人領か…この辺りはまだ人と亜人の住み分けがされてるんだな」 初代勇者が魔王を討伐したのはもう四百年以上も前の話、魔王さえ倒せば平和が訪れると信じていた初代勇者は、魔王の名を継ぐ亜人によって呆気なく打ち取られた。 なんてことはない。これは初めから魔王と勇者の戦いではなく、人間と亜人族による種族間戦争だったんだ。
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