第一話

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「なぁ…騎士団ってなんだ?」 名前から察するに恐らく騎士が集まる団体なんだろう。 だがその騎士団が一体この町でどのような役割を持っているのかもわからない。 俺の問いに男達は目を丸くする。 「騎士団を知らない…?マジで言ってんのかてめえ」 「だから田舎から出てきたって言ってるだろ?騎士団が何をする奴等なのかも知らんし、どこに居るのかも知らん。だからあんたらが心配する必要は微塵もないわけ。俺は聞く事聞いたら去るし、そこの女を助ける気もない」 「こいつ…変な奴だが嘘をついてるようには見えねえぜ?」 「だが、見られちまった以上生かして帰すわけにもいかねえだろ!」 「でもよ…俺等長い事この町に居るけどよ、ギルドでもこいつの顔見たことないぜ?騎士団って言った時のこいつの反応は本当に知らないっぽいし、早い所こいつの質問とやらを聞いて帰らせた方がいいんじゃねえか?さっき声もあげられてるし、もしかしたら誰かが来るかもしれない」 「帰した後に誰かに聞いて騎士団に通報されたらどうする!?すぐそこにギルドがある、ギルドに行かれたら一発アウトだ!」 なにやら二人が揉めているようだが、二人の会話から聞きなれない単語が聞こえたので彼等に聞いて見ることにする。 「なぁ、ギルドってなんだ?」 「ギルドも知らねえのかてめえは!ギルドってのは色んな人間が依頼を出したり受けたりする場所だ、依頼をこなせば報酬が貰える。腕の立つ奴はみんなギルドで稼いでる」 「んじゃあギルドに行きゃ金には困らないわけ、か。それだけ聞けりゃ十分だ。サンキューな、誘拐犯さんよ」 俺の問いに対して素直に答えてくれた男に感謝の念を述べる。 しかしギルドねぇ。腕の立つ奴がギルドで稼いでるってことは、腕さえありゃギルドで生計を立てることも可能なわけだ。 今日"牢獄"で獲物から巻き上げた金の何倍も貰えるに違いない。 …獲物から巻き上げるといえば、こいつらは誘拐犯だ。 罪を犯した者と、現在進行形で罪を犯している者という違いこそあるが…"牢獄"の奴と変わりない。 金を巻き上げても問題はないんじゃないか? …ないな。巻き上げよう。
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