第一話

13/15
前へ
/59ページ
次へ
まず第一に、就職。 俺が就職なんてできるのか怪しいもんだが…ギルドの稼ぎがもししょっぱかったら就職という道を取らざるを得なくなる可能性がある。 "牢獄"で生きていた時はそこら辺の奴から金を巻き上げたりしていたが…"牢獄"を出た以上、そんなことするわけにはいかん。 次に、勉強。 だが俺は"牢獄"の外の事を知らなさすぎる。 もし通うならば、これが一番のメリットだ。 俺が今取れる行動の中で、一番この世界の常識というものを学べるだろう。 …考えただけでもメリットはこの二つしかない。 だがしかし、どうするべきか。 「入学金や授業料なんて安くはねーだろ?別に助けたわけじゃない。結果的にそうなっただけだ。それに、仮に助けただけにしてもそんなお礼は受け取れないな」 「何と言おうと私は助けられたんです!それに、ヴァイスさんと学園に通ってみたいなって思うんです。だから…通いましょう!」 「断る」 「だめです!通いましょう!」 この女、しつこすぎる。 利用価値があるかもしれないと話に付き合ったが、付き合いきれない。 「それに、学園には寮もありますから住むところにも困りませんよ?」 「通うわ。よろしく」 手のひら返しが早いって?何とでも言え。 住む所は大事だ。"牢獄"にはふかふかの布団も、暖かい部屋も何もなかった。 雨が降れば寒くて震えながら雨に打たれて眠る事になる。 雪が降った日には凍死するんじゃないかと思った。だから冬という季節は嫌いだった。 "牢獄"から出てきた俺にとって、何より困ったのは寝る場所だった。 家を借りるにしても家を借りられるだけの金はない。 宿を借りるにしても何週間かは滞在できるだろうが、それを過ぎてしまえば出て行くハメになる。 ギルドの稼ぎがどれほどかもわからないし、確実性のある方を選択しただけだ。 高等部は3年間らしいから、その間にギルドで金を稼いで卒業したら貯めた金で家を借りるなりすればいい。 住むところにも困らず、この世界の事も知れるし一石二鳥ってやつだ。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加