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「ッ!?」
近付いてくる気配を察知し、目を覚ます。
すぐさま、扉を開けた時に相手から死角になる位置を探しだす。
見つけたのは扉の横だった。扉の横に移動し、気配を消す。
魔法を使ってもいいが、魔法という物は魔力を使用する。
腕の立つ者は魔力を察知できる。その為相手次第ではこちらの位置が筒抜けになる恐れがある。
ヴァイスは並大抵どころかどんな強者相手でも察知させないだけの技量があるが、それでも念には念を入れる。
もっとも、相手は気配を隠すなんて真似をせず、足音すら立てている為腕が立つとは思えないが。
「ヴァイスさーん!起きてますかー?アリスティアですっ!…あれ?」
扉を開いたのはアリスティアだった。
そういえば、早朝に来るとか言っていたか?
完全に忘れていたヴァイスであった。
「何だ、お前か」
「ひえっ!?な、なんでそんな所に居るんですか!?」
「お前を驚かせたかったんだよ」
「そ、そうなんですか…まぁいいです!おはようございます!」
アリスティアは納得できていないようだったが、気にしないことにしたらしい。
「おう。今、何時だ?」
「えーっと…朝の4時ですね」
「学園は何時からだ?」
「8時15分までに席についていれば大丈夫ですっ」
「…早すぎねぇか?」
学園に通うまでの時間や、事前の説明やら当日の手続き。
その他諸々あるにしろ、流石に早すぎる時間だった。
「そ、そうですね…私ったら浮かれちゃって、早く来過ぎました…」
俺の言葉を聞いて、しゅんとするアリスティア。
なんだかこちらが申し訳なくなる。
「まぁ…いつもこれくらいの時間に起きてたから特に問題はねぇな。それより腹が減った。ここの所ろくに食べてねぇんだわ。朝食といこうぜ」
起きてた、というのは嘘だ。
"牢獄"ではいつ襲われるかわからない。
相手が起きている時より、寝込みを襲った方が殺すのも、盗むのも、犯すのも、成功率は格段に上がる。
だからこそ、俺は寝込みを襲われない様に気配が近づいてくると目が覚めるようになっていた。
ろくに食べていない、というのは本当だ。
昨日は何も口にしていない。
最後に食事したのは3日前に行商人を襲ってきたという"牢獄"の奴から奪って食べたのが最後だ。
3日もあれば流石に腹が減る。ましてやヴァイスは、育ち盛りだ。
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