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「お前、料理うまいんだな」
現在、俺は部屋でアリスと共に朝食を摂っている。
あの後、寝直したがすぐに近付いてくる気配があった為飛び起きた。
買い物を済ませてきたのだろう。気配の正体は片手に買い物袋を持ったアリスだった。
アリスは俺に戻ってきた事を知らせると、そのまま一階に降りて朝食を作り始めた。
わざわざ買ったもの持って部屋まで来なくてよくね?一階に置いてきたら良かったんじゃね?と思ったが突っ込む事はしなかった。
「ありがとうございますっ!私、誰かの為に料理をするなんて初めてだったから不安でしたけど、そう言って貰えて嬉しいです」
「料理は親にでも教わったのか?」
「いえ、お手伝いさんに無理を言って教わってました」
お手伝いさんねぇ…?
やはりこの少女の家は相当裕福な家庭らしい。
立ち振る舞い、食事する姿の一つ一つが自分とはまるで違う。
自分は原住民みたいに野蛮だが、彼女のそれは洗練されていて非常に上品である。
まるで正反対な二人が、今ここでこうして共に食事を摂っている。
(人生、何があるかわかんねぇもんだな)
人生の半分はずっと独りだった。
"牢獄"であいつらと出会ってからは独りではなかったが、あいつらも下品ではないものの上品とは言い難い。
人としての価値も相当な差があり、何だか不思議な気分だった。
「お手伝いさんねぇ…お前の家は裕福なのか」
「田舎から出てきたんですから、知らないのは無理もないですよね。…私、実は王女なんです」
は?何言ってんだこいつ。
王女?王女ってあれか?王様の息子ってか?
いや息子は王子だ。つまり王様の娘?
「面白い冗談だな、他の奴に言っても結構ウケるんじゃねぇか」
「信じられないのも無理はありませんけど、本当なんです」
彼女の表情は嘘を言っているようには見えない。
だが、にわかには信じ難いことである。
「ま、話半分程度に聞いておくさ。それが嘘にしろ本当にしろ、お前の家が裕福な家庭だってことに変わりはない」
彼女は俺が信じない事に不満なのか、そうですかと言うと食事を再開した。
しかし王女ねえ…?
偶然助けた感じになった女が実は王女でした、なんて展開普通有り得るか?
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