第二話

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その後適当に雑談をしながら歩いていたヴァイス達は、校舎内に入った。 下駄箱すらも高級感を感じさせていて、改めてこの学園の規模の大きさを感じる。 アリスは上履きに穿き返ると、自分の鞄の中から上履きを一足取り出す。 どうやら俺の分も用意していたらしい。用意周到なことだ。 「悪いな」 「気にしないでください。学園を通う上で必要になるものは全て用意しましたからっ」 健気な少女である。 しかしただ助けられた位でそこまでするだろうか? どうしても裏がないか探ってしまう自分にほんの少しだが嫌悪感を抱く。 「まずは職員室に行きましょう!担任の方と顔合わせして、私もヴァイスさんのクラスを聞いていないので聞きましょうっ!」 そう言ってアリスは歩き出す。 下駄箱を背にして左に進み、更に左折して少し歩くとアリスは足を止めた。 扉があり、プレートには職員室と書かれている。 下駄箱から随分と近い距離にあるらしい。 アリスは2回ノックし、扉を開く。 「失礼します」 そう言って部屋の中へ歩を進めるアリス。 ヴァイスもそれに続く。 アリスと違って失礼しますなどとは言わなかった。言う必要性がわからないからだ。 職員室の中はとても広々としていた。 ずらりと並ぶ教員用のデスク。 その最奥に長細いデスクがあり、髪の毛が死滅しかけているおっさんが座っている。 恐らく他の教員より格が上なのだろう。椅子やデスクが他のと比べて圧倒的に違う。高級感が漂っている。 アリスが歩を進める。その足は禿げかけているおっさんを目指しているようだ。 擦れ違う教員はヴァイスを見ると怪訝な顔をしている。 大方、あんな生徒居たか?というところだろう。 「おはようございます、サイ教頭先生。今日から転入することになったヴァイスさんを連れてきました」 「おおアリスティアくんおはよう。そうか、彼が今日から転入するヴァイスくんか」 おっさんは手にしていたペンをデスクに置くと立ち上がる。禿げたおっさんはサイという名前らしい。 おっさんは人の良さそうな笑顔を浮かべながら俺の顔を見ている。 俺は野郎と見つめ合う趣味はないんだがな。
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