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先程は暗くて見えなかったが、近付いてみると抵抗していた影は若い女性だ。自分と同い年くらいだろうか。若いだけではなく、男を惹きつける容姿をしている。一言で言うならば、かなりの美少女だ。
対して、もう2つの影は屈強そうな濃い男達だ。黒いつば付きの帽子を深く被り、その目にはサングラスをしている。
"牢獄"では見慣れた光景だ。
恐らく、少女の容姿に惹かれた男達が、強姦しようと思い立ったのだろう。
"牢獄"から出てきたはずなのに、出てきた町で"牢獄"と同じ風景を見ることになるとは思いもしなかった。
「おーおー、格好良く構えちゃって。安心しろよ、俺は怪しいモンじゃない」
「自分は怪しくない、ってセリフ程信用できねぇもんはねぇな」
「いやいやほんとなんだってこれが。田舎から出て来てさ、さっきこの町に着いたんだわ。俺の生まれ育ったところって閉鎖的でよ、嫌気が差していざこうして町に出てきたはいいがどうしたらいいか全くわかんねぇんだわ。それでよ、どうしたらいいんだ?金を稼ぐにはどうしたらいい?」
「てめぇ…この状況がわかってるのか?」
声をかけるなり一人の男がもう片方の男に少女を預けると、俺の前に対峙し、戦闘態勢に入った。
男の右手には小ぶりのナイフ。胸に突き刺された所で心臓まで至るか微妙なラインの、本当に小ぶりなナイフだ。
男を観察する。喧嘩慣れしているのが見て取れる構えだが、"殺し合い"というものに慣れている様子ではない。
「確かに俺も悪かったよ。その女犯す途中だったんだろ?水を差しちまって悪いな。質問に答えてもらったら俺は消えるから安心してくれよ」
「安心できるわけねぇだろ?その後で騎士団に通報するんだろ?バレバレなんだよ」
本当にそんな気はないんだが、どうにも信用してもらえないらしい。
当たり前か。相手を信用するなんてのは馬鹿のすることだ。
だがしかし、俺に通報する気がないのは本当の事である。
もっと言えば――
「なぁ…騎士団ってなんだ?」
騎士団が何かすら知らないのである。
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