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灰色の空はどこまでも。
空いっぱいに撒き散らされる、鮮やかさが失われた空を見上げる格好で、一人の女性が転がっていた。
上下ともジャージ姿で、自由な方向に撥ねた短髪。意味もなくほぅと息を吐くその姿には、気力というものがまるで感じられなかった。
「あー……」
見上げた先は、まだ昼過ぎだというのに、今にも雨を滴れそうな暗い空。ねずみに例えられた色が、そのまま垂れて落ちてきそうだ。このような空を見上げ、気持ちが盛り上がる人間はそう多くないだろう。
だが彼女は、この空が嫌いではなかった。むしろ、そう多くない人間の側にある。白にも黒にもなりきれない中間の色は、何をも決め倦ねた自分にどこか似ているようで、親近感のようなものを抱いてしまうのだ。
湿気を含む空気を胸いっぱいに吸い込む。そしてそれを一気に、声を乗せて吐き出した。
「……暇だ!!」
往来に人の姿は見当たらなかったが、突然の大声に驚く者はいたらしい。
近くの木から、名も知らぬ小鳥の群れが一斉に飛び立っていった。
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