3人が本棚に入れています
本棚に追加
普段からニュースをまともに見た事がなかったが、何故かこの日この今、テレビに映る女性アナウンサーの低いトーンが耳に突き刺さる。
「2ヶ月前に逃走した、川崎市川崎中学校2年生杉村一輝の新たな情報が入りました」
「!?」
少し違和感を感じたのはこれだった。
托斗も知っている。知り合いだ。
去年は大会で何度か対戦したり、合同練習もした。今年の夏だって練習にも参加した。うちの中学と川崎中学校は何らかの縁があり親交があった。
だが、川崎中学校は国が発表した法で潰された。それを知ったのは事を終えた翌日だった。
「指名手配中である杉村一輝はここ、川崎中学校で8月に行われた特別法002号剣道限定廃止政策の生存者であり、彼は専用の刀を2本所持し逃亡したと見られています。近隣の方は充分に注意し・・・」
国家特別法002号剣道限定廃止政策
この国に住む未成年の子供が唯一恐れている法である。といっても標的は剣道部だ。
この法で国は一気におかしくなった。治安維持の為と世間はそう呼んでいるが大人にとってこの法は正義なのだ。
「一輝・・・」
托斗の箸は止まっていた。そして震えている。
何故ならテレビで皆んなが聞いている中杉村一輝という名前は犯罪者として植え付けられいるのだ。
托斗は心の中で信じていた。
あいつは、犯罪者なんかじゃないと・・
「そして、ここで速報です!」
「っ!」
女性の速報でぱっと我に返る托斗。
もう一度テレビの画面に映る女性に目を向けた
最初のコメントを投稿しよう!