第2話

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 前の二人はずっと会話してるようだが、速人がみるところキャッチボールと言うよりピッチング練習だ。ピッチャー達也がキャッチャーに向かってボールを投げる。キャッチャーがそれを受け止める。軽くボールを返す。達也はいわゆるイケメンだ。整った目鼻とお洒落な服装。百八十センチほどの長身。細くてスタイルもいい。少しの長めの髪型がとてもよく似合っている。大抵の女性は達也のことが気に入った。  さて、今回はどうだろう。速人もそこそこいい男ではあったが、体格はスタイルがよいと言うよりはゴツい。身長は百七十一センチと達也より小柄である。並んで立つと頭一つ達也の方が大きい。均整がとれてはいるが鍛えた人間特有の厚みがあり、童顔が相まって少しだけアンバランスだった。髪は短く揃えていて、達也とは対照的だ。どっちがいい男かは女性の好みによるところだろう。しかし速人は達也には惨敗してると思っていた。確かに総合的な面では達也の方が女性にモテるのは事実だった。  二人の会話はずっと続いた。速人が後ろで聞いている限り、この上本茜という女性はとても感じがよかった。美人にありがちな高慢さもなく、かといって媚びるわけでもなくごく自然に接していた。達也の冗談にもちゃんと笑って応対している。  たまに気配りからか彼女が速人にも話を振ってきてくれたりしたが、適当に相づちと達也への突っ込みだけ挟んでいた。 「やっと受かったのよ。もう何社落ちたか分からないわ」 「やっぱり大変なんだ、就職。俺も速人もここしか受けてないんだ。まあ色々あってね。どこも不況だ、何だと不景気な話ばかりだもんね」 「でもここはやたらと簡単だったんだよね。面接とかも一回しかなかったし。あなたたちもそう?」  確かに茜の言う通りこの会社の採用試験は簡単だった。面接でも嫌な思いは全くしなかった。速人も達也も不思議に思ったものだ。特に速人は以前、色々と問題があった。聞かれれば困ることはたくさんあった。一番、簡単な質問。何故あなたは前職を辞めたんですか? これを深く突っ込まれなくてよかった。  予想外の出会いだったが、楽しい時間を過ごしながら三人は歩いて行く。  二十五分ほど歩いただろうか。左手にコンビニがありT字路があった。道路が行き止まりになった。というよりは前方に大きな門がり、S&Sカンパニー国分寺研修所と書かれていた。目的地に到着したのに気付く。
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