第2話

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 どうやら彼女は少数派らしい。速人は少しだけ困惑したが、悪い気はしない。  少しだけ笑みを浮かべてメモを受け取る。 「ありがとう」  彼には他に言うべき言葉が見つからなかった。まずいぞ、こいつは。達也に何と言おう。とりあえず内緒にしておくことを決める。 「お待たせ。ここから真っ直ぐ言ったところに大きな掲示版が幾つかあって、そこで部屋割りとわかるらしいよ。そこで受付して各自、部屋に荷物を置いてその後、集合だとさ」  達也が戻ってきて手短に説明する。  四人は掲示板に向かった。すでに数十人がそこに群がって自分の番号を探している。まるで合格発表みたいだった。違うのは涙も喜びも特にないこと。  一覧図を見る入り口から真っ直ぐ行くとまず左手に管理棟と書かれている建物があった。その隣に体育館があり、地下にも色々な設備があるようだ。右手には実務棟と書かれる建物。入り口から八十メートルほど真っ直ぐ進むと宿泊棟が三つあった。右端から一棟、真ん中が二棟、左に三棟。それぞれ五階建てでかなり大きい。三棟の左隣に食堂や浴場がある棟がある。一覧図には乗っていないがさらに左に建物があった。五つの棟が並んでいることになる。この五つの棟の前には大きな階段があってそれを登ると各棟の二階部分を繋ぐ広い通路があり二階からも入れるような立体的な作りになっていた。なので一階から入るとその通路の真下を通ることになる。  速人は一棟の五階の五〇一号室だった。達也は二棟の一〇七号室。ニコは達也の隣の一〇八号室。そして茜は三棟の三〇二号室。 「みんなバラバラだね」  達也が茜に向かって言う。 「まあ三棟は女性専用みたいだからね。注意書きに書いてあるよ。ちょっと待って、一棟は二人部屋だけど二棟は四人部屋だって。三棟は……残念ながら四人ね」  茜が面白いことに気付く。 「えっ、何だそれ。なんで俺とニコがタコ部屋で速人はVIPルームなんだ。おかしいだろ」  達也が天を仰ぎながら言った。 「別にVIPじゃないだろ。もう一人いるんだし。まあ広くは使えるだろうし、一緒のやつがいいやつだったらいいけどね」 「頼む、代わって。ねえ、達也君」  達也が本当に嫌そうに哀願した。 「達也はお前だ。諦めろ。そろそろ時間になるぞ。ニコ、さっさと行こうぜ」 「ああ、相変わらず福永は細かいことにうるさいやつだ」
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