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住民たちもやられっぱなしではなく車で突撃したり、重機を操縦して叩きつぶしたりと戦ったが被害はどんどん拡大した。最初は獣や害虫駆除の延長の気分で出動した軍も戦争を意識するようになる。こうして後にクラブ戦役と呼ばれる戦いは始まった。
カニの背中の袋に入っている人間は、運良く救出されれば命は助かった。ショック死したりしてなければだが。兵士たちは背中に弾が当たらないようにと命令を受けてはいたが、目の前に簡単に人をバラバラにしてしまう生き物が現れた場合、普通、そんなことは忘れる。射撃の名人がどこにでもいるものでカニの飛び出した目や甲羅の継ぎ目などを効果的に撃ち抜き簡単に倒した例もあった。
人柱も救出が早ければ無事に至る例もあった。大体、三割から四割の確率で人柱や背中に背負われた人間は命が助かったのである。逆説的に言えば、それがもしほとんど助からないという確率であったなら、徹底的に空から爆撃を行い、兵士の被害はほとんど無しに近かったのではないかという皮肉な説もある。だが兵士という職業はその国の市民を守るのが建前の組織である。歴史的には前例はほぼ皆無に近いが。
人類以外との戦いにおいて、少なくとも個々の兵士たちは民衆を守るという建前を貫き通した。ノルウェーもオーストラリアもかなりの死者を出したが、上陸したカニどもは全て殲滅し、全ての人柱も回収した。最前線でカニと戦った兵士の三割から四割の兵士が戦死したのだが、この確率がカニに捕らわれた人間の生存率に近かったのは世界の人々の議論の種となった。
だが、これで終わりではなかった。パプア・ニューギニア、アメリカ西海岸、イタリア、南アフリカと世界各地でカニの上陸が始まった。その後も色々な沿岸でカニの姿が見られるようになる。アメリカ等は海兵隊や沿岸警備隊が即座に対応し、比較的に被害が少なく殲滅したが、そのような先進国ならまだしも発展途上国においては対応が後手後手にまわり被害が拡大するという事態に陥った。そこで国連主導で世界規模の軍が組織されることになる。何と言っても相手は人間ではないので、ほぼ無条件に各国が参加した。世界の歴史上、初めて人類が結束したのである。
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